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2009年10月07日

ナノメディ交流会

週末、ナノメディシン融合教育ユニットの交流飲み会があった。

これはナノデバイスやナノマテリアル、生体イメージングやシミュレーション技術を医療応用することを目的とした連続講義と課題解決型の実習からなるプロジェクトであって、宮野さんに誘っていただき、四月から受講しているのである。

企業・大学・公的機関の研究者や学生など、いろいろな人が参加していて大変面白い場である。

交流飲み会はCocon烏丸のお洒落なダイニングバーSARAで行われたが、最近の飲み屋はこれほど安くなっているのかと感心してしまう店であった。

視覚情報の処理を研究している新井さんとのお話が面白かった。

大脳の視覚野に入った情報は背側経路と腹側経路という二つの経路で並列的に処理される。物体がどこにあるかという判断は背側経路で行われ、物体が何であるかという判断は腹側経路で行われるという説が一般的である。

大脳皮質で視覚情報が最初に入るV1(一次視覚野)と呼ばれる領野において、特定の傾きを持つ線に反応するニューロンが存在することは50年以上前から知られていたが、最近では腹側経路の途中にあるV4で特定の曲率を持つ線に反応するニューロンが見つかっているらしい。

このニューロンに関して面白いのは、ある曲率を持つ線であれば、位置や向きがどうであろうと反応することである。つまり曲率の組み合わせが画像認識の特徴量として使われているということが示唆されている。

しかし我々が物体を見る時、それは曲率の組み合わせなどではなく、連続的な全体像として認識される。特徴量に分解することで物体を識別するのは無意識的な働きである。つまり「何であるか」の判定と「どのように見えているか」の認識は別である。実際、目に見えたものを絵に描くことができても、それが何であるかを判断できないという人もいる。V4というのは網膜からそれほど遠くない場所という印象があるが、その時点ですでに「何であるか」の判定が始まっているのである。

「『見え』っていうのは基本的にV1とかV2のレベルの話みたいなんですよ」と新井さんは言う。

V2を出た時点ですでに幾何的な情報から記号的な情報への変換が始まっているのだ。

ランダムドットステレオグラムに脳が騙されて立体的に見えるように、単なる曲線の組み合わせでしかないのにどうしてもマグカップに見えるというような錯覚がそのうち現れるのだろうか。

脳における物体認識の仕組みに関して、ものすごくたくさんのことが分かってきているのだなという印象を受けた。

このような神経回路の働きを解明することは計算機における情報処理の新しい仕組みを作るのにも役立てられるのではないかと常々思っているのだが、その話を新井さんにしたら、それはきっとある、と断言してくれた。

JPEG2000では画像圧縮にウェーブレット変換が使われているが、実はこれとそっくりの変換を行う機構が脳にあるらしい。

人類がウェーブレット変換を知ったのは視覚の悠久の歴史と比べたらつい最近のことである。

逆に言えば視覚の研究を進めていくことによって、人類がまだ想像したこともない画像圧縮のアルゴリズムが見つかる可能性があるわけだ。

新井さんは動物を使った電気生理学的な実験に取り組まれているそうだが、ナノメディシン融合教育ユニットの課題解決実習では視覚情報処理のモデル屋さんである鹿内さんと共同で研究をされるそうなので、また新しい進展があるかもしれない。

Posted by taro at 2009年10月07日 23:19

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