| --> |
« 学年概念の超克によるいじめ対策案 | トップページ | ブログから旅行情報を取り出すシステム » 2007年02月10日メカニズム・デザイン昨年末の忘年会にて小山先生の奥さんがNTTと九大で行っていた研究について聞き、なかなか面白いと思ったのですが、その専門家である松原繁夫先生が今年から助教授として石田研究室に来られ、今週の専攻会議でお見かけしました。 どんな研究かというと、メカニズムデザインと呼ばれる分野です。僕は専門家ではないのでうまく説明できるか分からないのですが、個々の参加者(エージェント)が一定の基準(欲求)に従って行動すると前提した時、全体として最大の利益が得られるような全体の枠組み(ルール)をデザインすること。 極めて簡単な例を考えると、たとえば二人でケーキを切り分ける状況。どちらもより多くのケーキが欲しいとして、なるたけ手間をかけず、両者が納得の行く形で分けるにはどうしたらいいか。計りやものさしはその場に無いとします。 おそらく多くの人が使う方法は、一人がケーキを切り分けて、もう一人が自分の欲しい方(大きいと思う方)を選ぶ、という形ではないでしょうか。 適切なルールを作ることで、二人とも納得の行く結果が得られることの一例です。 もうひとつ、オークションのデザインというのがあります。Yahoo!オークションのように、値段をどんどん吊り上げていく方式はイングリッシュオークション(English auction)と呼ばれ、かなり普及しているのですが、なにせ落札者が決まるまでに何度も金額の上乗せが行われるため、時間と手間がかかります。 一方、公共事業でお馴染みの入札というのは、各人が希望金額を隠した状態で箱に入れて、一番高い値段を付けた人が落札するという仕組み。シールドオークション(sealed auction)と呼ばれたりするようです。これは一瞬で決着がつきます。 ダッチオークション(Dutch auction)というのは売り手が値段をどんどん下げていき、その値段で買ってもいいと思った人が宣言することで落札されるという方式。これも一瞬で決着がつくのがメリットです。 シールドオークションとダッチオークションの場合、「ライバルがどれくらいの値段を付けるだろうか」という憶測に基づいて金額を決めるため、落札価格が高くなりがちです。(売り手にとっては嬉しいことですが)。 ここで、ビックレーオークション(Vickrey auction)という、まだあまり使われていない方式があります。 各人が希望金額を隠した状態で入れて、一番高い値段を付けた人が落札するという所までは入札と同じですが、落札金額は落札者が入れた金額ではなく、二番手の人が付けた金額にしよう、という手法です。 奇妙な方式に思えますが、一定の条件が課されると、イングリッシュオークションと(ほぼ)同じ結果が得られるというのが面白い所です。そもそもイングリッシュオークションではどのように決着がつくかというと、最終的に二人が競い合い、どちらかがあきらめた時に終わります。最後の方では上乗せの金額がどんどん小さくなっていき、1円に収束するとしたら、落札金額は「二番手の人が付けた金額+1円」。つまり、ビックレーオークションの結果とは1円違うだけ。 競争者が三人以上いたり、商品が多数ある場合も考慮すると、それほど簡単な話ではないのですが、いろいろな条件や仮定を置くことでうまく機能することが証明できる。その場合、一瞬で決着がつくため、イングリッシュオークションよりも格段に効率がいい。だったらもっとビックレーオークションを活用してもいいのではないか。 こんな風に、多くの人々を納得させる仕組みやそれが成立するための条件などを考える研究を「メカニズムデザイン」と呼ぶようです。 その第一人者が横尾真先生であり、以前はNTTで研究されていたのですが、その後九大に移られました。小山先生の奥さんも横尾先生にくっついて九大に移り、博士号を取って今はポスドクをしているそうです。そして松原先生も同じグループから来られたのです。 ケーキの切り分けやオークションに限らず、いろいろな仕組みに使えそうなアプローチです。たとえば選挙とか人事評価とか社会保障とか。皆が納得することができて、かつ無駄のないデザインができるのではないか。 経済学に似ている所もありますが、現状を分析するのではなく、新しい仕組みを設計していくという点に特徴があるのでしょう。 Posted by taro at 2007年02月10日 13:45 |
