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« 京都の新緑 | トップページ | 地下農場見学のあと » 2006年05月03日パソナの地下農場見学東京のオフィス街の地下に、農場がある。 人材派遣会社のパソナが農業分野への人材派遣を目指し、 都市における就職難と農村における人材不足を共に解決してしまうという、大変興味深い目標だと思う。 ぜひ行ってみたいと思い、ブログなどで宣伝してみたところ、興味を持ってくれる人が案外多く、 パソナ地下農場があるのは大手町野村ビルの地下二階。 大通りに沿って有名な企業の本社ビルがこれでもかというほど並んでいる。 待ち合わせ場所のビルの前で、スーツ姿のAz嬢が街の風景にとけ込んでいた。 ビルの角の反対側に回ると、yuko嬢も待っていた。 さらに、東工大で地球環境を研究されているK先生が研究者風のラフな格好でやってきた。 仕事帰りだがカジュアルな服装で現れたエヌは、厚生労働省に勤める国家公務員。 最後にやってきたriri嬢は駆け出しの写真家で、非常にエネルギッシュでモチベーションの高い人。 あとひとり、8年ぶりに会う知人のしんご氏がまだ来ていないが、彼はかなり気の置けない人なので、 一階のロビーはまるごとパソナが所有している。 受付で予約していることを告げると、ぴしっとスーツ姿で決めたお姉さんが我々をロビー奥に連れて行き、 「人材派遣を通して新たな雇用インフラを構築し、社会に貢献していくことが創業時からの理念であり……」 長くなるのかと思いきや、案外手短に終わり、 「では、これから地下農場をご覧ください」 連れられてぞろぞろとエレベータに向かう。 「このビルは以前、銀行の本社ビルでした。その地下二階は金庫だったのですが、それを改装して農場にしています」とお姉さん。 地下二階に降りた。いよいよ大手町唯一の農園を見学である。 意外なことに、白い壁と木目調の床が調和したお洒落で清潔な部屋だ。 実際のところ、このエリアはパソナの社員食堂も兼ねているのだそうだ。 「カメラ持ってきた?」とririに尋ねると、「ごめん、忘れた」 白い柱の間から緑が顔をのぞかせている。 受付のような小さなテーブルの横にいたスーツ姿の女性が「ご見学ですか?」と訊いてきた。 壁にいろいろポスターが貼られていて、活動の内容が紹介されている。 十分ほど遅れて、しんご氏が合流した。 しばらくすると、奥から青いデニムのシャツにバンダナを巻いた女の子が出てきて、挨拶した。 「こんにちは」 快活な感じの女の子で、笑うとかわいらしい。 スーツ姿のお姉さんに案内されるのかと思っていたのだが、こちらの方がずっといい。 「それじゃ、まずはこちらへ」 柱の間を抜けて、花卉を栽培している部屋に通された。 天井には無数の発光ダイオードが張り巡らされているが、その中にいくつか、強い光を放つランプ。 「メタルハライドのランプと、発光ダイオードで育てています」 咲き乱れる花壇。 中央には、周囲よりひときわ高いひまわり。 「このひまわりはもっと背が高くなる品種なんですけど、若干高さを抑えています」 それでも天井に触れんばかりだ。 太陽の方向に首をまわした経験のないひまわり。 同じ部屋の一角でトマトの苗が育てられていた。 「赤い光は植物の生長を早めるのですが、葉が厚くならない。逆に、緑の光を当てるとしっかりとした葉を作るようになるんです。真ん中のは、両方の光を当てています」 実験というより、どちらかというとオブジェだ。 部屋の奥にはガラス越しに、二つの台が並べられている。 「こちらのトマトには、レーザー光を当てています」と、さらりと説明する。 レーザーポインターでお馴染みのチカチカした赤い光が真上からトマトの葉を照らしている。 レーザーで育てたトマトなんて、何とも不思議な響きだ。 これもアートか。 「赤のレーザーダイオードで育てる方が、通常の赤い光を当てるより良く育ったんです」と説明してくれる。 これ、本当なのだろうか。 隣はハーブの部屋。さきほどの部屋より若干照明が暗い。 「ハーブというのは元々雑草の仲間なので、薄暗い所でよく育つんです。だから、この部屋も少し薄暗くしています」 いい匂いが漂っている。添えられたカードに、スペアミントなどと書かれている。 さらに、隣の部屋が水田になっている。 四畳半ほどのスペースが二つ設けられ、それぞれ深さ十センチほどまで水が張られている。 「米は年に三回収穫しています」 ベトナム人もびっくりの収穫率である。 「でも、実のなっていない稲穂も多いんです。なかなか難しくて……」 片方の水田には、底に土でなくセラミックスボールというのが敷き詰めてある。 さらによく見てみると、稲の茎に米粒くらいの小さな貝がくっついている。 「タニシですか?」 タニシは漢字で書くと「田螺」。昔から田と共に生きてきた生物なのだろう。 「ここの稲の葉は柔らかいな」稲に触れながら、K先生が言う。「UVを当てていないから、クチクラ層が発達していないのかも。菌とか虫のことが心配になるけどね」 「ここのCO2濃度はどれくらいですか?」とK先生が訊く。 なんだか、大学の研究会での質疑応答みたいになっている。 「K先生、今日は計測装置を持って来なかったんですか」と僕が口を挟むと、 K先生は農学部の出身であり、現在は地球温暖化を研究している。 「これだけ植物があると、CO2濃度は低くなるんですかね?」と僕。 Az嬢は時折、思い出したようにメモを取っている。 「何に一番お金がかかりますか。光ですか」とK先生。 少しだけお寝坊さんであり、夜更かしさんである。 水田部屋を出て、ガラスで仕切られた部屋に移動する。 この部屋では何段重ねにもなったプランターが天井まで積み上げられている。 「ホウレンソウは50日で収穫できます。社員食堂でサラダ菜として出しているんです」 なにしろ大手町の地下である。日本で二番目くらいに土地の高い場所ではないのか。 「一株あたり、1万円のサラダ菜です」 パソナの社員になれば、そんなサラダ菜が毎日食べられるらしい。 「サラダ菜以外は観賞用です。安定して作れないので……」 それでもたまに囓ってみたりすることはあるらしい。トマトは非常に甘くておいしかったとか。 隣の部屋には何種類もの野菜が小さなプランターに分けられて少しずつ植えられていた。 「よく育つのはどれか、調べているところです」 K先生の説明によれば、植物は害虫などから身を守るために刺激物を蓄えるのであって、 続いて、トマトの部屋に入った。 「なぜこんなにアルミホイルを?」 そういうものなのか。 トマトを植えた土台の部分はそのままオフィスの一角に置けそうなくらい清潔だが、元々は水耕栽培の専業メーカーが作っているキットらしい。 「下から光を当て続けた時、植物がどういう風に育つかっていう研究は、簡単そうだけど、まだ誰もやったことが無いんじゃないかなぁ」K先生がつぶやく。「単なる冗談の研究で終わってしまうかも知れないけどね」 トマト部屋の片隅には茄子とパプリカが植えられていた。 「稲はちょっとした変化で成長の速度が変わるんです。少し目を離していただけで、弱くなってしまったりとか」 密閉された空間だけに、燻煙の巡りは良いかも知れない。 ちなにみにこの農場では、稲の受粉までスタッフが行っているとのことである。 何か質問ありますか、と女の子が訊く。 「どんな人が良く見に来るんですか?」 と、CanCam風に片脚を若干後方に上げる。 「今までに何人くらい、派遣されたんですか」とエヌが訊く。 実はエヌ、厚生労働省では派遣業を管轄する部署にいる。 ところがエヌの質問に対してスタッフの女の子は首を振り、 契約期間は半年だという。いきなり秋田に行きましょうとか言われても、ためらう人が多いのではないか。 「合わなくて帰ってくる人もいます」と女の子。 世の中には案外度胸のある人が多いのかも知れない。 「なーんだ。ここで訓練するわけじゃないのか」としんご氏。 歯に衣着せぬ言い方をする。 「ここは何人で管理してるんですか?」 休日は放っておけばいいというものでもないようである。植物は生き物なのだ。 「どういう経緯で始めた人が多いんですかね?」 彼女、かなり似合っていると思う。スカウトされたんじゃないか。 「では、サラダ菜をご用意しましたので」 カフェエリアの一角、白いテーブルクロスを敷いたテーブルに案内された。 「ドレッシングがうまいよ」と言いながら、3000円目に手をつけるしんご氏。 僕も5000円分くらい食べた。 カフェエリアの天井からは青々とした葉が垂れ下がっている。それを見上げていたしんご氏がつぶやく。 「これ、地下鉄の天井がこういう風になっていたら、絶対いいよね」 たまにそういう車両があっても面白いかも知れない。 もう少し別の側面から今回の見学を考えてみたいと思って、エヌに訊いてみた。 「派遣会社って、悪いこともいろいろしてるの?」 と言ってぼやかす。 「このプロジェクト、とても意義があると思うんだよな」と僕も言ってみる。「昔、茶農家でバイトしていたことがあってさ。どこの農家でも人が足りないから、学生相談所や情報誌でバイトを募集して、農家に派遣するというのをやっていたんだけど」今から六年ほど前の話である。「農家での仕事、気に入る人はすごく気に入ってくれるんだよね。今まで親の年金で生活していたような人が、農家ではすごく受けが良かったりして。『あの彼、今年も来てもらえませんか』とか、指名されてんの。人は場所によって輝くということだよね」 「ちょっと似てる話があって……」とririが口を挟む。「京大の理学部にいたQさん、知ってるでしょ。大学出たあと、ずっとパチスロで生活していたのだけど。うちの蔵ではサツマイモの収穫の時期にものすごく人手がいるから、彼にも声をかけてみたの。そしたら鹿児島まで来てくれて」 ririの実家は鹿児島にある焼酎の蔵元なのである。 「そしたら彼、その仕事を相当気に入ってしまったみたいで。そのままずっと、一年以上働いているんだよ」 今ではriri以上に実家に溶け込んでしまっているとか。 いろんな生き方があるものである。 そんな多様な生き方を考えるためのひとつの場所として、地下農場もまた、有意義で面白い活動だと思うのである。 地下農場を出た後、八重洲口の料理店に行って皆で夕食。 個性的な面々のため、会話が非常に弾んで面白かった。 Posted by taro at 2006年05月03日 23:05 « 京都の新緑 | トップページ | 地下農場見学のあと » |
コメント
あー、参加したかったです。
ちなみに隣の隣くらいにうちの会社があります。
また東京にお越しの際はぜひ。
Posted by: 小関 at 2006年05月04日 00:57
了解。来てもらえなくて残念でした。
また何か行う時は声かけるようにします。
Posted by: taro at 2006年05月04日 01:21
















