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2006年02月19日

大学の地下で営業しているA地下バー

先月、今出川のラーメン屋で古くからの知人であるaと偶然出会った。

A地下バー、今も営業しているから来てと言われた。

A地下バーというのは大学の構内で営業しているバーである。
総合人間学部A号館という建物の地下にあるので、通称A地下バー。
サークルの部室を改修してバーを作ってしまったのである。
aは昔からその店でマスターをしている。

僕は長いこと行っていなかったのだが、今も営業を続けているとのこと。
聞けば、開店してから9年目だそうである。

昨夜、その新年会に行ってきた。

もう二月の中旬だが、今さら新年会である。

かつてA号館と呼ばれていた建物(今は何という名前なのか知らない)の地下に入ると、
Black Riotという看板が出ている。これがバーの正式名称である。

店内は広い。

客は五人ほどいた。

aの隣に座っていた女が、

「おおお、太郎やんけ」

と懐かしそうに言った。

誰でしたっけ、と訊いたら、ふてくされられた。

さいわい、教えられる前に思い出した。
昔の同級生のH-Y美。
会うのは四年ぶりくらいか。
かなり雰囲気が変わっていたので、すぐには分からなかった。

他の客とは初対面だったが、常連客とBlack Riotのマスターたちである。
曜日ごとにマスターが決まっているシステムは昔のまま。
aは金曜日を担当している。
今回の新年会は、各曜日のマスターがそれぞれの客を集めて合同で開くというものだった。

「ママ」と呼ばれている水曜マスターが出してくれた卵の味噌漬けは、なかなか美味だった。

店に来た時間が遅かったため、a提供のキムチ鍋は食べ損ねた。

aは学部生の頃は農学部で発酵の研究をしていて、
「発酵友の会」というサークルを創設して味噌やチーズを作ったりしていた。
料理を作るのは得意である。

その後、生命科学研究科に進学し、ドクターを取ったそうだ。博士論文の内容は、大腸菌の細胞内で多く見受けられるブトレッシン(putrescimyo)の新しい代謝経路、ならびにインポーターを発見したというもの。

ブトレッシンはアルキル鎖の両端にアミノ基のついたポリアミンの一種であり、その塩基性によってmRNAに結合し、立体構造を変える働きを持つ。これによって遺伝子の発現を翻訳レベルで調節できるため、分裂の盛んな細胞に多く存在する。ブトレッシンはスペルミジン(spermidine)、スペルミン(spermin)と言った他のポリアミンの前駆体でもあるが、これらはその名の通り、精子に多く含まれる成分で、精液の匂いがするそうである。ブトレッシン自体も微妙に精液の匂いがするらしい。それを貝の旨み成分でありハマグリの匂いのするコハク酸まで代謝する経路を見つけ出したのである。

従来の考え方では、ブトレッシンは大腸菌では以下の経路で代謝されると考えられていた。

ブトレッシン→γ-アミノブチルアルデヒド→
 γ-アミノ酪酸(GABA)→コハク酸セミアルデヒド→コハク酸→TCA回路

今回aが発見した経路は、

ブトレッシン→-γ-グルタミルブトレッシン→
 γ-グルタミル-γ-アミノブチルアルデヒド→γ-グルタミル-γ-アミノ酪酸→
 γ-アミノ酪酸(GABA)→コハク酸セミアルデヒド→コハク酸→TCA回路

である。着想のひとつのきっかけとしては、哺乳類でアセチル化から始まる代謝経路が知られていたため、γ-グルタミル化から始まる経路を想定したという。

また、これまで機能が知られていなかったycj遺伝子群がその代謝経路をコードしていることを突き止めたそうだ。さらに、ブトレッシンの細胞内への取り込みを行う新しいインポーターもycj遺伝子群の中にコードされていることを見つけ出した。

(正確に言うと、最初に遺伝子に着目し、そこからブトレッシンに至ったようである。大腸菌におけるγ-グルタミル化を研究している時、偶然、γ-グルタミル-p-ニトロアニリドを分解する酵素を発見した。それをコードしているのがycjLという遺伝子だったのだが、それまでycj遺伝子群の働きは知られていなかったので、それと類似する遺伝子をGenomeNetのデータベースで検索したところ、緑膿菌でイソプロピルアミンをγ-グルタミル化経由で代謝する遺伝子群と似ていることが分かったため、ycjの一部をノックアウトした大腸菌でどのようなアミンが蓄積されるかを調べ、ブトレッシンに到達したのだそうだ。)

このようにして発見されたブトレッシンのインポーターと代謝経路からなる一連の流れをputrescimyo utilizationという意味で、puu(プー)と名付けたらしい。

従来知られていた代謝経路に関しては、「今、調べているとこ」だそうだが、その経路を報告している古い論文はaに言わせると「適当に書かれた論文」であり、むしろ今回発見されたものの方が主ではないかという。

いずれにせよ、大腸菌のパスウェイデータベースに永遠に刻まれる成果である。

A地下バー


【注】検索エンジンに引っかかるのを避けるため、一部の単語を書き換えてあります。ヒント:プ→ブ -scine→-scimyo

Posted by taro at 2006年02月19日 18:04

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コメント

おお!行きたいなA地下バー!
今度、連れて行ってくれよー

そういえば昔、銀閣寺近くの電気も水道もガスもみんな止められているボロボロの飲み屋「文楽」に一緒に行ったの覚えてる?あれもすごい店だったよなあ。

Posted by: masafumi at 2006年02月20日 11:42

また行きましょう。
だいぶ快適な店です。

文楽はまだあるのでしょうか。
近いのに行ってません……。
あの店のママの根性は素晴らしかったですね。

Posted by: taro at 2006年02月20日 11:49

アクセス解析からたどってきました。笑
ものすごくすばやくレビューしてますね~。
専門外の人にこんなに詳しく読んでいただいて、光栄です。
http://biocyc.org/ECOLI/NEW-IMAGE?type=PATHWAY&object=PWY0-1221&detail-level=4
↑んで、データベースです。笑

また遊びに来てください。

Posted by: 金曜マスター at 2006年02月20日 13:14

おお。ウェブでも公開されているのですね。

論文は代謝経路の発見に至るプロセスとかが面白かったです。

またA地下バーにも飲みに行きます。

Posted by: taro at 2006年02月20日 14:21

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