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2005年12月01日

AT&Tの研究所

ニューヨークで国際会議に参加した後、隣のニュージャージー州にあるAT&Tの研究所を訪問し、研究発表してきた。AT&Tはアメリカの電話会社である。

会社の規模が大きいため、かなり自由な雰囲気の研究所のようだった。活発な議論ができて、非常に面白かった。

訪問に際しては、AT&T研究所に一年間滞在されている奈良先端の波多野先生、その受け入れ研究者であるシーハム・アメール=ヤヒア博士、それからデータベース部門の責任者であるディヴェッシュ・スリヴァスタヴァ博士に非常にお世話になった。

発表後、研究所近くのマレーシア料理のレストランでご馳走になった。
ニューヨークは東京と違って、車で三十分も走れば木立が延々と続く、鄙びた風景が広がっている。マレーシア料理レストランのあるフローラムパークという街も、三階建て以上の建物がほとんどない田舎町である。住民は皆、車でショッピングモールまで買い物に出かけるため、それ以外の場所は商業的に発展しないのだと思う。

フローラムパークからマンハッタンに帰る電車の中では、シーハム・アメール=ヤヒア博士と一緒だった。
彼女は三十代前半の女性研究者だが、フランスで学位を取って、AT&Tの研究所は七年目。研究テーマはXQueryに情報検索(IR)の側面を持たせること。現在は、W3CにおけるXQueryのワーキンググループのメンバーも務めている。
波多野先生いわく、

「アメリカは若い人にどんどん重要な仕事をやらせるんだよ。うらやましい」

W3Cのワーキンググループがどんな形で仕事を進めているのか、本人に聞いてみた。

「最初のきっかけは、アメリカの国会図書館に大量のXMLデータがあると聞いて、問い合わせしたことだったわ。むこうの担当職員はどちらかというとエンドユーザだったけれど、一緒にXQueryに基づく検索システムを計画したの。ところがすぐにXQueryでは十分な検索ができないことが分かった」

「どういうところがですか」

「たとえばエレメント内における単語間の距離に基づく検索といったことができない。逆に、異なるエレメントに含まれる単語間の距離は、構造のどのレベルまでを考えるかによって変わってくるから、従来のIRの手法をそのまま適用するわけにもいかない。それで、XQueryにIRを組み込む必要を感じて、ドラフトの作成に取り掛かったの。それが七月のことだったわ」

その後、AT&Tの代表としてワーキンググループに加わったという。

「理論的に楽しい部分が終わってしまうと、あとは地道に詳細を固めていく作業。商品ベースで考える他社の人たちと話をまとめていかなくちゃならないわけ。彼らは完全で趣味のいい(neat and complete)言語を作ることには興味がなくて、『こんな機能は我々の顧客は使わない』とか言って、仕様をどんどん削っていってしまおうとするの。それはそれで面白い経験だったけど」

「ワーキンググループの中ではそういう人たちの割合は高いのですか」

「10人のワーキンググループメンバーのうち、8人がそういう考え方よ。研究者的な関わり方をしているのは、私ともうひとり、大学から来ている人だけ。だって、ワーキンググループに加わるためには、企業なら年間五万ドル、大学でも年間五千ドルの購読料を払わなくちゃならないんだから。メリットが無ければなかなか入る気になれないでしょう」

「AT&Tは例外ですか」

「うちは『未来を拓く仕様の策定に関わっている』ということを対外的に見せたいっていう側面があるから」

「いい会社だ」

「そう」

ニュージャージーとマンハッタンの境であるハドソン川に面した駅で僕らと別れた後、ジャズダンスの授業を受けに行くと言っていた。

「これがニューヨークのいいところよ」

仕事もプライベートも充実させている感じの方であった。

Posted by taro at 2005年12月01日 00:48

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コメント

AT&Tいいなあ。

Posted by: 356 at 2005年12月01日 04:07

良い感じでした。
最近、別の電話会社に買収されたようですが。

Posted by: taro at 2005年12月01日 23:26

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