【報告】
淀川河川敷で昆虫食の会(関西バッタ会)

11月18日、大阪の淀川の河川敷で昆虫食の会を行いました。

一緒に企画したアウトドア生活の達人、西さんは普段、淀川で獲れた魚や貝を調理して食べるのが趣味という人で、都会の野生生物に関してものすごくくわしい。その西さんが計画の当初、「寒すぎてもうバッタいないんじゃないか」といくらか不安げでした。

しかしわざわざ前日に事前調査を行ってくださって、「結構いる」とのお墨付きをもらって実施。「寒かったら出てこないかも知れないけど、暖かい時はたくさん跳ねてます」とのこと。

当日はそれほどたくさん声を掛けた訳でもないのに、ネットやメーリングリストを見たということで続々と希望者が集まり、最終的な参加者は20名でした。

ああ、みんな実は昆虫を食べたいと思ってるんだな、と感銘を受けました。

駅前から川原までぞろぞろ歩きます。

このあたりは河口から近く、悠々と流れる淀川の河川敷は広々としていて、とても眺めがよい。海水も入ってくる汽水域で、様々な魚が獲れるようです。対岸には大阪の高層ビル群が見えます。こんな都会で昆虫を採集して食べるなんて。ミスマッチが素敵です。

西さんのお知り合いの先生方の協力で、コンロや水場など、調理に必要な施設もあります。土手から長い列を作って降りてきた我々を見て、「よく集まったなー」と苦笑する西さん。はたしてこれだけの空腹を満たすだけのバッタが獲れるのか?

昆虫好きが多く集まりましたが、今回の企画のメインゲストと僕が勝手に思っていたのはオオクワガタ研究家の平山先生。マンションの一室で数千匹のクワガタを育て、デパートに売って裕福な生活をされている方です。

その他、大学院で昆虫を研究している女の子、素粒子物理の先生、来年新聞社に就職する学生さんたち、大学の研究と実社会を結びつけることを目的としたNPOKGCのメンバー、公務員、会社員の方々など、個性的な面々が集まりました。

さっそく採集の開始です。

用意しておいた虫取り網が足りないので、二人一組になって収集に向かってもらいました。


その前に、クワガタ博士の平山先生に採集のコツを聞いてみます。

「湿った場所にいるんです。生物には水が必要ですから。一匹いる所にはたくさんいる。一箇所に集まっていることが多いです」

「群れを作るということですか?」

「いえ、環境がいい所に集まってくるという意味です。ひなたぼっこも好きなので、日の当たるところにもいます。そういうバッタの方が取りやすい。茂みの中にいるバッタは人が近づいても逃げないので見つけにくいけれど、畦道でひなたぼっこしているバッタは茂みの中に逃げようとして飛び上がるので、簡単に捕まえられます」

なるほど。食糧難の時代に役立ちそうな豆知識です。

大勢でススキの生い茂った茂みに入って虫取り網を振っていると、河川敷を散歩していた外人カップルが立ち止まりました。


じっと見る外人カップル。


わざわざ覗き込む外人カップル。


ノリが良くて素晴らしいですね。昆虫食について、少し世界的に広められた気がしました。

その他、Yリナ嬢とA子嬢は虫取り網を振り回している時、小学生くらいの男の子の一団に声を掛けられたそうです。

「バッタ捕まえて何すんの?」と聞かれ、
「食べる」と答えると、
「お腹壊すで」

かなり引いていたようです。

しかしなかなか理解のある子供たちだったようで、自分たちが獲ったバッタを彼女たちに提供し、かわりに彼女たちは彼らにカマキリをあげたとか。

昆虫採集と並行して、調理場で料理の準備を始めていた西さん、次々に持ち込まれるバッタやイナゴに「みんなたくさん取ってきてびっくりしますわー」。

参加者それぞれのビニール袋の中に次々と入れられていくバッタ。



途中から虫取り班と調理支援班に分かれ、バッタ炒めやバッタ天ぷらを作るための準備を始めます。

虫取り班はさらに黙々と虫取り。

最初から最後までバッタ獲りを続けていたまり嬢の姿には感銘を受けました。まるで虫取り職人です。

しかし僕も実際に試してみると、案外はまります。

跳ねて逃げられるとくやしく、逃がすものかと追いかけてしまいます。

僕が修得した一番うまい捕り方は、飛び跳ねる前のバッタに上から網をかぶせ、網の下から手を差し入れて獲ること……。当たり前ですね。でも、これだとかなり効率よく獲っていくことができます。

「はまりますよねー」と聞いてみると、皆一様に「はまりますよ!」と答える。

人類は何百万年も昔からこうして虫を捕って食べてきたのかも知れない。その遺伝子が騒ぐのでしょうか。


そして実際にバッタを捕まえようとしてみると、いかに跳躍というのが有効な逃走手段であるかが分かります。網無しでは見事逃げられてしまう。

その話を平山先生にすると、

「草のない公園で昔、バッタがどれくらい逃げられるのかを試してみたことがあるんですよ。捕まえずに追いかける。そしたら次第に一回で飛ぶ距離が短くなって、数十メートルで動けなくなるんです。触っても、動かない。持久力が無いんですよ。しばらく休ませると、また飛べるようになるんですけどね」

まるでファーブル昆虫記です。

やがてバッタの調理が開始されました。


炒めてやると、面白いくらい真っ赤になります。形を見なければ、エビそっくりです。



そもそもバッタの外殻というのはエビの殻と同じ物質なのではないでしょうか。

一口食べて、誰もが一様に「エビだー」「エビー」。本当に、エビとしか言いようのない味でした。

天ぷらなども作ってみました。


これはかなり美味。バッタの風味や殻の堅さが活かされている気がします。

さっきまで生きて逃げ回っていた大量のバッタを食料にしてしまうということ、人間はたくさんの命を奪って生きているということを実感します。

今回の企画のアドバイザーをしていただいている「昆虫料理研究会」の総裁、内山先生のお話によると、「抱卵したカマキリはクリーミーで絶品」とのこと。

卵付きのカマキリは一匹しか獲ることができなかったため、食べることができたのは学生のK村くんのみでした。

「どんな味?」
「おー、何とも形容しがたい味」
「クリーミィ?」
「ええ、クリーミィです」

カマキリ卵食に成功したK村くんを取り囲み、ヒーローインタビューのようになっていました。

まさこ嬢は卵のないカマキリを食べて、「出汁みたいな味する」と言っていました。

遅れてやってきた野食計画の鈴木さんは盛り上がっている光景を見て、「虫パーじゃないっすか」。

虫パーティー。

さらに、西さん秘蔵のアシナガバチの巣も食べます。これも河原で採集してきたようです。


うなぎも焼きました。淀川産。国産天然のウナギなんて、滅多に食べられる代物ではありません。ありがたくいただきました。


いろいろ食材はあったのですが、それでも参加者がこれだけいると、どうにも足りない。

昆虫だけでは人類の空腹を満たすことができない!

近くの業務スーパーに行って、うどんを購入してきました。農耕って素晴らしい!

鍋に入れて、おいしくいただきました。

皿の中に残っていたバッタの残骸がまるでうどんに混入した虫のようですが、先ほどまでそれがメインだったと考えると不思議な気分です。蝿とか、ちゃんと火を通せばおいしくいただけるような気もします。


やがて日が暮れて、恐ろしい程の寒さがやってきました。西さんが「河川敷は街中より3度低い」と言っていましたが、まさにそれを体感。

皆でたき火を囲み、暖を取ります。

しかしこの場所は夜景も素晴らしい。

水面に光を落とす高層ビルの明かり。その夜景を前に、淀川で獲れたてのウナギをさばき、昆虫を炒める我々。

都会アウトドアです。

話題は自然、環境などの話になります。

現在、ものすごい速度で生命の多様性が失われていて、過去の地質時代の区分とされる時期にも匹敵する規模だとか。

これだけたくさんの種が絶滅してしまったのだから、未来の古生物学者は現代を生命史におけるひとつの区切りとみなすのではないかという話をしました。ひょっとしてもう新生代は終わってしまったのではないか。

たき火を囲みつつ、議論は深夜10時まで及びました。終電の時刻が来て、解散しました。

みんな、昆虫好きなんだなと思った一日でした。

なお、今回の企画は野食計画という団体が中心となって行われました。スーパーに売っていないものを食べることで自然と親しみ、食に関して考えていこうという会です。mixiのコミュニティもあり、どなたでも参加できますので、ご興味のある方、ぜひご参加ください! イベントの告知なども流れます。

℃ Taro Tezuka (2007.12.23)
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