【調査報告】
創造性とは何か。ノーベル賞委員会に聞く。

ノーベル賞100周年を祝う記念フォーラムが宝ヶ池の国際会館で開かれたので、聞きに行った。フォーラムのテーマは「創造性とは何か」。僕が最近まで強く興味を惹かれていた問題であり、期待していた。だが話題は主に「創造性をどう高めるか」といった内容に終始し、「創造性をどう評価するのか」「創造性の定義は何か」といった点についてほとんど触れられていなかった。

ノーベル博物館館長のリンクビスト教授は創造性を生み出す要因を、個人と環境とに分けて整理し提示した。生理学・医学賞受賞者の利根川先生は脳研究の成果を紹介したが、創造プロセスの解明はだいぶ先のことと考えている様子であった。文学ノーベル委員会委員長のエスプマルク先生は過去の文学賞の判定基準がいかに偏向していたかを反省し、文学評価の難しさを示した。

パネルディスカッションに対する質疑応答の際、僕は尋ねてみた。

「ノーベル賞というのは個人に与えられるだけではなくて、組織、つまり人間が作ったシステムが賞をもらうこともあるんですよね。たとえば国連とか。そこで、いつの日か、コンピュータが人間以上に重要な発見をするようになった時、そのコンピュータにノーベル賞が与えられることはありうるのでしょうか」

会場から笑い。ウケた。

「何をお聞きしたいかというと、人間の創造性と、コンピュータが情報の山の中からルールを見つける操作には、何か違いがあるのか、ということです。もし人間にしかノーベル賞が与えられないとお考えでしたら、それはコンピュータが賞をもらっても喜ぶはずがないという、プラグマティックな理由によるだけなのでしょうか」

司会をされていた物理学者の佐藤文隆先生が「その頃には選考委員もコンピュータになっていたりして」と冗談を飛ばし、ノーベル電子博物館副館長のForsen教授という先生(専門は化学)に振った。返ってきた返答は、以下のような内容だった。

"If computer were smart enough to write articles, and if people were impressed and nominate it to the Nobel Committee, and if they were also impressed, then it would be 'a surprise!' on October 10th. But I don't think that would happen."(もしコンピュータが論文を書けるだけ賢くて、人々がそれに感銘を受けてノーベル賞委員会に推薦を行って、委員会のメンバーもまた感銘を受けたとしたら、10月10日(ノーベル賞の受賞者が発表される日)に「なんとびっくり」ということになるだろうけど。しかし私はそんなことが起きるとは思わないですね)

「そんなことが起きるとは思わない」と考える理由については、答えてくれなかった。僕が本当に聞きたかったのは「創造性は機械によって完全に模倣できてしまうのだろうか」という問題であって、そこまで踏み込んでくれなかったのは残念だ。

会議の後、廊下で司会の佐藤先生に声をかけていただいた。

「あの質問をしたの、君かね?。面白かったよ。質問に賞を出すとしたら、あれじゃないかな」

と言ってくださった。だが、計算機が創造性を持つ可能性については

「僕はdisagreeだね。計算機は与えられた範囲でしか問題を解決できないけど、人間はそれを乗り越えていくでしょう」

と語っておられた。


℃ Taro Tezuka (2002.3.22)
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