【体験報告】
毛穴フェチシズム
知り合いの女の子が四条河原町の化粧品店で働いている。そこに顔の皮膚を30倍に拡大して見せる装置があると聞いて、ぜひ一度体験してみたいと思った。そうして、常々機会をうかがっていた。
やがて一緒に行ってくれるという女の子が現れた。ひとりで入るのは気がひけるが、女の子と一緒なら大丈夫。
土曜の晩、僕は友人の他
僕らの他にも客がたくさんいる。接客中の友人“こいちゃん”はいつもと雰囲気が全然違い、敬語を使ったりしている。女は場面に応じてここまで変われるのかと、改めて感心。しばらく待たされたが、やがて念願の装置の前に座ることができた。小型ビデオカメラがディスプレイと繋がっていて、鮮明な画像が映される。
初めは何となく、いきなり顔面に当てるということが出来ず、指先を拡大してみた。巨大な指紋。驚くほど鮮やか。指紋の線が、なめらかな曲線でないことも分かる。僕が感心していると、
「じゃぁ、いきますよ」
と、何の前置きもなく、こいちゃんがカメラを僕の頬に当てた。ディスプレイに映し出された僕自身の肌を見て、あまりの気持ち悪さに「うわっ」とオーバーリアクションしてみた。剛毛がぼうぼうなのだ。もちろん日常生活のスケールでは、これは剛毛とは言えない。だが30倍に拡大されたウブ毛は、まるで鋼の柱のように皮膚から突き出ているのであった。「剃ってくれば良かった」と一瞬思ったが、しかしこのスケールを意識してしまったら、町を歩くことも出来なるだろう。手で頬を触れてみた。柔らかいウブ毛が、かすかに感じられただけだった。
「それじゃぁ、次は鼻で」
こいちゃんがカメラを鼻に当てる。荒涼たる原野の上に、薄汚いボツボツがクレーターのように散らばっている。どれも死火山のようで、滲み出るはずの油脂は噴出口の奥に沈殿し、静かな圧力を潜ませている。
「鼻の皮膚はみずみずしいですねぇ」
お世辞だか何だか分からない感想を言われる。だが僕の見た限り、ディスプレイに映された光景は瑞々しさとは縁がなさそうだ。こいちゃんに言わせると、きめの細かい文様が入っているのがいい肌なのだそうだが。
カメラを滑らせ、ほくろを拡大する。映されるのは黒い点ではない。中央に行くほど濃くなる、境界線のぼやけた染みである。小さい頃に顕微鏡で見たことがあったが、久しぶりに見た。こいちゃんいわく、「ほくろの外側はどんどん生まれ変わっているんですよぅ」。内側はどうなのか?。押し出されて剥がれ落ちていくとか、そんなところか。顎のあたりの無精ひげは、頬のうぶ毛よりもさらに太く鋭く、刃物のようだった。毛穴のまわりでは、剥げかけた皮膚が無惨な姿をさらしている。
「汚いよ。汚すぎるよ。これが人間というものだよ」
僕はひとりでフィーバーしていた。「みんな、こんな汚い顔をぶら下げて歩いてるんだぜ。どうよ?」
他の人の肌も見せてもらった。一緒に行ったMちゃんはなかなか可愛い子で、拡大された肌も期待通り綺麗な三角模様でタイル貼りされている。だがもちろん鼻には油脂の出る穴があって、僕のそれと同じように油が溜まっているのだ。Mちゃんの毛穴や肌のキメを覗くというのは、なんだかすごいことのような気がした。そのまま毛穴フェチになってしまいそうだった。
ここは、恋人をつれて一度来てみるべき場所である。本当にエロティックだ。
℃ Taro Tezuka (2002.4.15)
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