味噌も納豆も部屋で作れる!
11月25日更新  


ビラには、以下のように書かれている。

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 目標:

 @ 世間の色々なものを発酵させ、発生する泡や香りに感動する。

 A 共に発酵の様子を眺めながら友情を深める。

 B 発酵によってできたものを眺めたり、使ったり、
   食べたりしながら、死に行く数兆匹の微生物に想いを馳せる。 

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「発酵友の会」。今年の4月にスタートした、 比較的新しいサークルである。構成員は7人。 農業系のサークルは数多いが、発酵をメインに扱うサークルは 他に知らないので、取材してみることにした。

会長の栗原くんは、昔からの知り合いでもある。 取材を依頼すると、快くOKをもらえた。

一乗寺にある栗原邸にメンバーが集まっているそうなので、取材に行く。 栗原くんが下宿しているのは、ごく普通のマンションである。 近所から、匂いのことで苦情は来ないのだろうか。

部屋の中も、ごくごく普通の散らかり方である。 雑菌はとても多そうである。 栗原くんはまだ帰っておらず、メンバーの 織田くんと堀江くんが取材に応えてくれた。

会長宅にて
会長宅にて
活動内容について教えてと頼むと、さっそく 怪しげなビンを取り出してきてくれた。 中には米粒の混ざった薄茶色のペーストが詰まっている。 これは、「西京味噌」と言うらしい。 信州味噌や江戸味噌が熟成に1年以上かかるのに対し、 西京味噌は1週間で出来あがるのが特徴。 学園祭で商品として売るために作ったそうだ。

学園祭で出すお店の看板商品は、「クワルク」という クリームチーズを使ったサンドイッチ。これも当然、 自分たちで作る。チーズは過去に作ったことがあるが、 その時は失敗してしまったそうだ。カビが生えて、 固くなってしまった。

「でも、食った。」
「大丈夫そうだったしな。」
「会で作った発酵食品を食べて、あたったことは無いよ。」

少し不安にさせるような自信である。

現在までに扱ってきたのは、チーズ、ヨーグルト、 ぬか漬け、納豆、など。 毎月1回テーマを決め、担当者がレジメを作ってくる。 そのレジメが全員に配られ、それぞれ自宅で 味噌を作ったり納豆を作ったり。研究室やボックスではなく、 自分たちの家で作ってしまうところが面白い。

味噌、作ってます
味噌、作ってます
ミーティングは毎週1回、月曜の昼に農学部の学生用スペースで 開かれている。そこで、各自の経過を報告しあう。 今まで扱った中で一番好評だったのは、現在作っている、西京味噌。

「納豆のように、包んだらお終い、じゃなくて、  いくつものプロセスを踏むのが面白い。」

僕も「西京味噌」の仕込みを手伝ってみた。

大豆を煮てから、ペースト状に磨りつぶす。 これを米麹と混ぜ合わせ、熱湯消毒したビンに入れる。 米麹は、米屋で買ってきたそうだ。普通の紙袋に、 表面に粉を吹いたような米粒が詰まっている。

「面白いでしょ。米つぶの表面に、数億の麹菌が  付着しているんですよ。」
「へぇ。すごいもんですねぇ。」

袋の中に手を入れて米麹を摘み取った瞬間、 堀江くんが声ならぬ声を出した。

「あ。あぁぁぁ・・・。」

僕は慌てて動きを止める。

「え。何か、しました?。」
「袋の中に手を入れると、雑菌がついちゃうんですよ・・・。」

手に菌が付いているなんて、小学生の時に教えられて以来、 考えたこともなかった。本当にいるんだ・・・と、 逆に感心してしまう。

堀江くんは静かに紙袋を傾け、大豆ペーストの中に落とす。 そして混ぜ合わせ、ビンの中へ。密閉して、一週間待てば 西京味噌の出来上がりである。

散らかった部屋の中には、味噌のビンが点在し、 ヌカ味噌のバケツがトイレの横に置いてあった。 栗原邸では、様々な発酵が同時並行で行なわれているようである。 今後はキムチや醤油、生ゴミの堆肥化などにも 取り組んでいきたいと考えているそうだ。

「生ゴミの堆肥化、やるのかな?。」

と織田くん。

味噌の出来あがり
味噌の出来あがり
「堆肥は食えないしな。」
「『はい、出来上がりました』で終わっちゃうよな。」
「栗原は、やりたいみたいだけど。」

いろいろ話しているうちに、栗原くんが帰ってきた。

「生ゴミの堆肥化?。どうしようか。  作ったら、有機農研で使えるけどね。」

栗原くんは初め、有機農業研究会というサークルの メンバーとしてずっと活動してきた。 今年の4月、学内各所にビラを貼り、知り合いに声をかけることで 発酵友の会を結成した。会長であり、創設者である。

会長として、この会をどう見ているかを聞く。

「会の基本コンセプトは、『やる』ということ。  最近は『やる』だけでなく、少し頭も使う。」

「サークル内で男女関係のゴタゴタを作るべし、  これも目標のひとつ。目指しているのは、  『発酵系お勉強イベントサークル』、これだね。」

発酵の魅力は、目の前で変化が起こっている様子を 手にとって見れることにあるという。

また、発酵というテーマを通して面白い仲間を 集めようというのも、重要な目的のひとつである。 取材の途中、栗原くんの友達の山田さんという人が やってきたが、その理由も面白かった。

学園祭に出店
学園祭に出店
「EM菌を増やそうと思ったんだけど、ペットボトルが無くて。  ここならあると思ってきたけど、案の定、あるね。」

栗原邸は農業に興味がある人間のサロンと化しているようであった。 山田さんはそのまま、1時間ほど居座ってしまった。

取材が終わりに近づく頃、だいぶ前に仕込んだという 西京味噌のビンを手にとって織田くんが言う。

「一週間経ってるし、もう食べられるんじゃないかな。」

蓋を開けて、匂いを嗅ぐ。

「エーテルの匂いがするわ。」

同じく匂いを嗅いだ堀江くんが言う。

「エーテルというより、エチルアルコールの匂いがする。」

化学用語が日常の会話に使われていることに僕は驚いた。 普段からこんな会話をしているのだろうか。 科学を理屈ではなく肌で感じとれていることを羨ましく思った。

もう食べられるだろうということになり、その、 エチルアルコールの匂いがする味噌で味噌汁を作ることになった。 玉葱を煮込んだ自家製味噌汁は、最高にうまかった。

取材の最後、栗原くんに、会の活動から学んだことを聞く。

「こうやったら発酵するってのは、本にも書いてあるし、  わかっていることだけど、実際にやってみると、面白い。  わかりきったことでも、目の前にすると面白いもんだよね。」

「それと、サークルは案外簡単に作れるってのに驚いた。  発酵なんて、かなり特殊なテーマだけど、人は集まる。  学生なんて、みんなヒマだからね。やりたいことがある人間は、  やりたまえ。呼びかけるといい。年寄の言葉みたいだけど。」

会長と大量の糠漬け
会長と大量の糠漬け
発酵友の会は、会員を随時募集中である。 発酵に興味のある人、面白い人を募集している。

ただし、発酵以外のことに興味を持っている人には、 むしろそのテーマで新しいサークルを作ってもらいたいと言う。 そして発酵友の会のメンバー一同、面白いことをやっている 他のサークルと交流出来ることを楽しみにしているそうだ。

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